生物は太陽の光を浴びて進化し現居住区の光環境に順応しながら生存している。その中でも特筆すべきは,30億年以上の長い進化の過程で,光障害を防御する機能を獲得したことである。しかし近年の成層圏オゾンの破壊による光環境の変化は,生態系のバランスをくずし異常な事態に向かう可能性を秘めている。本書では,第1章でオゾン層破壊と地上の太陽紫外線環境を展望し,第2章では生物が進化の過程で獲得してきた紫外線障害の修復機能を原核生物と植物を例にとり,第3章ではヒトの光受容センサーである皮膚にターゲットを絞り,皮膚と光,特に紫外線が皮膚に与える損傷と防御機構について,第4章では人体をマクロにとらえ,健康にかかわる眼の光障害,光老化,光ストレスなどの今日的話題を,第5章では生物の遺伝情報が光障害とどうかかわるかをDNAの目で見ようというものである。
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