脊椎の分節的安定性のための運動療法 腰痛治療の科学的基礎と臨床

腰痛に対する従来の運動療法は、腹筋群や背筋群の筋力や持久力の強化により、脊椎アライメントを修正し、いわゆるマッスルブレーシング（筋のコルセット）を形成することに主眼がおかれていた。しかし、脊柱は多くの関節からなる分節的構造であり、外側の大きな筋群（グローバル筋群）を鍛えたとしても、分節的な不安定性は解消されない。グローバル筋群のトレーニングにより一時的に症状が改善されても、分節的不安定性が改善されていないため再発を繰り返す結果となる。 　われわれが最終的にめざすものは無痛性の動的安定性であり、日常生活、職場、スポーツ、レクリエーションなどのあらゆる場面で柔軟に適応する脊柱である。脊柱の動的安定性を獲得するためには、グローバル筋群だけでなく、分節的な動的安定性に関与する腹横筋、多裂筋などの深部の小さな筋群（ローカル筋群）や脊柱という円柱の蓋と底を形成する横隔膜と骨盤底筋群に目を向ける必要がある。急性期から慢性期のあらゆる腰痛に対してこれらの筋群の機能を評価し、その運動制御に対してアプローチしていく必要がある。 　本書には、豊富な研究に裏づけられた科学的根拠と臨床経験に基づいた深部ローカル筋の臨床検査、評価およびそれに立脚したアプローチが述べられている。　（訳者序文より）

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