本書の目的は、日本語の代表的な束縛表現(binding expression)である"自分"の習得を手がかりに、第二言語習得のメカニズムを考察することである。束縛表現とは、それ自身では固有の指示を持たず、同一文中内に義務的に先行詞となる名詞句を必要とする文法形式のことである。英語を母語として日本語を習得する学習者を被験者に、"自分"の持つ主語指向性(subject-orientation, SO)、局所束縛性(local binding)、長距離束縛性(long-distance binding, LD)の習得を調査した。そして、第二言語習得における学習可能性(learnability)の問題、普遍文法利用可能性(accessibility to UG)の問題、母語からの転移(transfer from L1)の問題、言語習得の臨界期仮説(critical period)の問題などについても議論した。本書の言語学的基盤となる理論は、Chomskyの提唱する普遍文法(Universal Grammar, UG)理論であり、その理論的枠組みに則って習得データを分析した。このようなアプローチは、"普遍文法理論に基づく第二言語習得研究"と呼ばれたりもし、母語習得のみならず、第二言語習得においても"言語習得の論理的問題(logical problem of language acquisition)"または、"プラトンの問題(Plato's problem)"が存在すると考えている。(まえがきより)
第二言語習得における束縛原理-その利用可能性 EPUB, PDF, TXT, AZW3, MOBI, FB2, DjVu, Kindle电子书免费下载。